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東京大学医科学研究所
先端医療社会コミュニケーションシステム 社会連携研究部門 「医療再建を目指すワーキンググループ」 貫名有香、三谷明範、城口洋平、鈴木陽介、 児玉有子、岸友紀子、上昌広 |
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医療崩壊は、今この瞬間にも刻々と進んでいます。我が国の人口当たり医師数は、OECD諸国の3分の2<1>であり、病院医師数は、産婦人科、小児科、内科、外科等で減少が続いて<2>います。厚生労働省は、医師数は増えていると主張しますが、現在増えているのは、昭和40年代に一県一医大新設により医学部定員を増員したときの医師たちで、今後リタイアしていく世代です。現在、既に44歳以下の医師数は定常状態に達し、増加しているとは言えません<3><4>。病院を受診する国民のニーズに応えるために、週平均70.6時間、若い世代では週平均80時間もの過剰な勤務<6>を強いられております。一方、国民のニーズはさらに増加を続け<5>、かつ多様化する傾向にあるため、今後も医療崩壊の深刻化は続くと予想されます。
過去に、医師養成定員を最大8,360人まで増やし、その後削減した経緯がありますが、現在の7,898人から、8,360人まで増やす程度では、わずか5.8%の増員でしかなく、今後24年間、週70時間以上の勤務が続き、60時間勤務が実現するのは45年後のこと<7−1><7−2>です。これは、医師の勤務時間の問題だけではなく、22年後に最大となる国民のニーズ<5>に対して、必要な医療を提供することは不可能であることを意味します。
もっと抜本的な医師養成数の増加が不可欠です。現在、週平均70〜80時間の勤務を強いられているのですから、労働基準法の週平均40時間にするためには、医師数を2倍にしてもよいはずです。しかし、ここでは、現実的に質の高い医学教育が可能な範囲を考慮して、医師養成定員を2倍とはせず、50%の増員、つまり毎年400人ずつ、10年かけて4000人増やすことを提案します。この場合、6年後から医師の勤務時間は減り始め、13年後には70時間を達成、24年後に60時間を達成<7−1><7−2>できます。将来の人口減少も考慮し、患者需要がピークとなる2030年を目処に、医師養成定員を減らすことにも留意する必要があるでしょう。
また、多様な国民のニーズに応えるためには、看護師・薬剤師等、多数のコメディカルの存在が不可欠であるにも関わらず、我が国の病床当たりコメディカル数は欧米の約4分の1という人手不足<8>の状況にあることが、医療崩壊に拍車をかけています。看護師・薬剤師の数が少ないと患者の死亡率が上がることは、国際的に示されています<9>。コメディカルの養成数は十分であるため、雇用数を4倍にしてもよいはずです。しかし、我が国の人口当たり急性期病床数は欧米の約2倍であることを考慮し、現実的には、4倍とはせず、2倍の増員を、中規模以上の病院において実現することを提案します。
舛添厚生労働大臣の要請により、医師数削減の閣議決定を6月17日に撤廃した福田総理は、1.医師養成定員の50%増、2.コメディカル雇用数の2倍増を、一日も早く実現しなければ、深刻化する医療崩壊をくい止めることはできないでしょう。
医療崩壊が社会問題となり、政府・与党は緊急的に医師確保、医師派遣といった対策*0-1を打ち出してきたが、医師派遣はわずか6人*0-2にとどまり、焼け石に水の状態である。客観的データによる現状把握に基づいて議論が行われているとは言えない状況で、辻褄合わせの対策を打つのみでは医療崩壊は止められない。
ここでは、マスメディア、厚生労働省や医療事故の刑事事件化など医療周辺の動きと萎縮医療、我が国の高齢化を含めた医療需要の現状分析と将来推計、諸外国データを参照した場合のわが国の医療提供体制に関する現状分析と将来推計など、多岐にわたるデータから現状を見据えたうえで、主に患者の安全性の観点から、必要とされる病院職員数の推計を行い、医療崩壊をくい止めるための対策を考察した。ここに提示したデータや対策案が、わが国の医療提供体制に関する国民的議論を深める一助になることを切に願うものである。